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「自分が変われば、人は変わる」の前に


「自分が変われば、人は変わる」。だから、自分を見つめなおし、人や自分への理解を深め、物事の受け止め方を変えていきましょう。


自己啓発や心理関係の本などによく出てくる言葉ですが、スローガンのようにこの言葉を使ったり、鵜呑みにするのは危険なことです。かえってこの言葉に縛られて、うつ状態を悪化させてしまうことも少なくありません。


そもそも、「自分を変える」というのは、とても大変なことです。何しろ、その自分の個性を発揮しながら、これまでの人生を生き抜き、くぐりぬけてきたわけですから、そうした個性は自分という家を支える大黒柱のようなものです。


ちょっとやそっとではビクともしませんし、無理に変えようとすれば家自体が揺らいでしまいます。


精神的に辛く、苦しい状況がある場合、その対策はやりやすいところから始めていくのが基本です。おかれた状況によって違いがありますが、一般的には
@ 休養や身近な人への相談など、ゆとりの回復
A ストレスを減らすための部署移動や転職などの環境調整
B 医療機関や相談機関、自助グループなどを利用しての治療やサポート
の順番で対応していくことが多いようです。


けれども、周囲の人たちから「どこに行ってもストレスのある同じような状況はあるのだから、まずは自分を変えなさい」などと忠告され、いきなりカウンセリングで自分を変えたいと言ってくる人が後を絶ちません。


中には、そうした言葉を鵜呑みにして、過酷なストレス状況を続けたために、心身を消耗して、うつ病やパニック障害などを悪化させてしまう人もいます。


また、自分に自信が持てなかったり、罪悪感を感じやすい人ほど、周りの状況よりも自分自身に目が向いて、反省しようとしてしまい、こうした言葉を鵜呑みにする傾向があります。


特に、DVやパワハラ、いじめなどでは我慢はかえって危険です。まず、ストレスを与えてくる相手からどうやって避難するかを考え、実行していくことが効果的で重要な対策になります。


メンタルの問題のほとんどは、自分の個性と置かれた環境の組み合わせで起こります。そして、「自分を変える」よりも、周りの状況やメンバーといった「環境を変える」ほうがたやすく、ガラリと変えることができて、問題の解決に大きな力を発揮します。


まずは、手近にできる環境調整をやってみて、それでも問題が残る場合に初めて「自分が変われば、人は変わる」に目を向ける。この順番がとても大切なのです。


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