TOP:ご利用ガイド・コラム・お役立ち情報 へ

抗うつ薬を初めて使う方へ(その2)


うつで気力がなくなると、気分が落ち込み、体が重くだるくなって、何をやるにもおっくうになったり、楽しさやおいしさが感じられなくなり、記憶力、集中力、判断力が落ちてきます。


こうした能力の低下は、うつの回復に必要な休養を促してくれるのですが、やっかいなのは、不安や緊張が高まり、周りに対して過敏になったり、リラックスできずに不眠になったり、焦りやイライラも高まりやすいという点です。


こうした症状は休養を妨げ、うつの回復を邪魔するばかりか、気力をさらに下げてしまって、うつを悪化させることも少なくありません。


そのため、睡眠薬や安定剤、抗不安薬などが、うつの場合には補助的に使われることがよくあります。


そのようにして、心の消耗をおさえ、体も休ませていくと、気力は少しずつ高まっていきます。


しかし、前回にも書いたように、気力を外から注入して、急激に高める方法はありません。


休養によってゆっくりたまっていく気力をなるべく無駄遣いしないように、節約、省エネで活動をセーブしながら気力の回復を待つのがポイントです。


そうして、気力がある程度以上高まっていくと、まず気分が改善し、まるでうつが治ったかのように感じられます。


でも、そう思って活動しようとしても体はついてきません。すぐに疲れてしまい、気力も下がって気分が悪くなり、今度はまるでうつが再発したかのように感じられます。


気分が良くなっても、体が不自由なく活動できるようになるまでは、疲れを感じたらすぐに休ませ、体のペースに合わせた活動を心がけることが大切です。


そうして、さらに気力が高まると、気分も良く、体も不自由なくついてくるようになって、もう治ったと思って早々に薬をやめてしまいがちなのですが、注意が必要です。


睡眠薬や安定剤は、必要性がなくなってくれば、それに合わせて減らしていっていいのですが、抗うつ薬は必要性が感じられなくなっても、半年から1年は飲み続けるほうが安全です。再発を防ぐために、さらに1年以上飲み続けていく場合も少なくありません。


抗うつ薬は、日常的な心身の活動を縁の下から支えているような薬です。飲んでも効いている感じがあまりしないのですが、やめてその支えがなくなると、うつ症状が急にあらわれ、効いていたことがよくわかるという薬なのです。


そのため、抗うつ薬を減らしていく時には、まるで支えを一本抜いては大丈夫かどうかを時間をかけて確かめ、その上でまた一本抜いていくように、少しずつ、少しずつ、確かめながら減らしていくのが安全で理想的です。


薬を早くなくしていくことを目標とせずに、日常生活を支障なく過ごせることを目標に進めていくことが大切なのです。


《ワンポイント:うつ病》一覧へ戻る