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気になっても、先に進もう!
2019/06/09
かなり昔になりますが、マンツーマンでしばらく尺八を習っていたことがあります。奥が深い楽器なので、人に聞かせられるほどには上達できませんでしたが、私に向いていたのか、一人で練習していても飽きることがなく、今でも時々吹いては楽しんでいます。
そういう中で、楽器を人について習ったのが初めてだったので、印象深く記憶に残っていることがあります。
それは、私がどんなにプシュ、プシュと悲惨で、聞き苦しい演奏をしていても、師匠は笑わず、そして演奏を止めずに、曲の終わりまで吹き進むことを促し、励ましてくれたことです。
汗だくで、何とか終わりまでたどり着くと、曲目の終了印をペタッと押して、「じゃ、次回はこの曲ね!」とサッサと先に進んでいくものだから、私が思わず「こんなんで先に進んでいいんですか?」と聞いたことがあります。
すると師匠は「いいんだよそれで、音はそのうちに出るようになるから。」と。
「そういうものなのか?!」と半信半疑でやり続けていたら、本当にだんだんと吹く音が安定していきました。
さらに、曲目の終了印がどんどんと増えていくのを見て、「こんなに吹けるようになったんだなぁ」と、うれしい錯覚にもおちいり、根拠のない自信が持てたのも副産物だったと思います。
実は、気になることや不安なことがナンドも頭に浮かんで、つい確認を繰り返してしまう強迫性障害の治療には、こうしたアプローチが有効と言われています。
気になるからと、そこで立ち止まり、大丈夫かどうかを確認すると、一時は安心できても、またすぐに気になり始めてしまい、それがどんどんエスカレートしていくという、やっかいで辛い病気です。
普通に考えると「気になるんだから確かめれば、安心できていいじゃないか!」と思うのですが、そう簡単には収まりません。確認すればするほど「本当に大丈夫だろうか?」という疑念が研ぎ澄まされていき、「気にしていない完璧で、スッキリした状態」にどんどんとらわれていくのです。
だから、気になっても立ち止まらずに、「今、やっていること」「これからやろうとすること」に向かっていくことが大事です。「間違えても、うまくふけなくても、曲の最後まで吹き続ける」という要領です。
強迫性障害にじゃまされないで、日常生活や好きなこと、やりたいことをやり続けることで、「気になることがあってもなくてもどちらでもいい」という状態に近づいていくのです。
とても根気の要る作業ですが、遠回りなようで、これが一番の近道です。
気になることを打ち消すのではなく、抱えていくこと。ぜひ、参考にしてみてください!
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