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反面教師という呪縛

2014/11/23
親や兄弟の対応に苦労したり、辛い目にあったり、また職場や友人関係で嫌な思いをしたりすると、人はよく「私はあんなふうにならないように気をつけよう」と考え、そう行動しようとします。


これを「反面教師にする」と言いますが、人間関係を円滑にしたり、他人から嫌われないために、人は自然とそう心がけていくことがよくあります。


しかし、ちょっとした迷惑なら反面教師ぶりも軽い感じで終わりますが、長年にわたって辛い状況が続くと、怒りや恨みも上乗せされて、とても強い反面教師ができあがってしまいます。


一見、「人を辛い目にあわせないように」という心がけなのだから、どれだけ強くてもいいんじゃないかと思ってしまいますが、あまりにも徹底されたり、自分でもコントロールできないくらいになると支障が出てきます。


たとえば、自分のことしか考えない親や兄弟に苦しんだ人は、何においても相手優先を心がけ、自分のことを後回しにしがちになります。


すると、人の仕事ばかり手伝い、自分の仕事がたまりにたまって、残業が増え、果ては休日出勤にまで至り、これが長期にわたると、疲れ果て、うつ病や不安障害を引き起こしかねません。


他にも、両親の激しい喧嘩が絶えない中で長く育つと、怒りの感情を無意識のうちに抑えてしまい、他の感情までも出しにくくなることがよくあります。


すると、本来自分を守るために大切な「怒り」という感情を使う琴ができずに、攻撃してくる相手を遠ざけられなかったり、怒りを小出しにできずに、我慢に我慢を重ねて大爆発することを繰り返してしまうことが多くなるのです。


反面教師もここまでになると、まさに呪縛です。


それも、自分自身が自分を縛ってしまうので、この呪縛から自分を開放するのは、なかなかやっかいなことになります。


たまりにたまった思いを吐き出し、自分に染みついた考えを見直し、心を少しずつ新しいバランスに導いていく作業は、相当な根気を必要とするからです。


こうした、ひとりでは心もとない道のりを一緒に歩んでいくというのも、カウンセリングの大切な役割のひとつだと考えています。


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