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薬とカウンセリングの関係

2011/02/25
薬にたよりたくないと言ってカウンセリングを求めてくる人の中には、受診してみたけれども医者の対応に傷つけられ、医療を求める気になれなくなった人が少なくありません。


精神科医のほとんどは薬物療法が中心で、患者さんの話をじっくりと聞く時間的な余裕がない場合が多く、そのため心のケアを求めてきた患者さんの期待が裏切られてしまうのです。


さらに、最近の電子カルテの普及で患者さんに向かって話しているのか、パソコンに向かって話しているのかわからないような診察情況もそれに拍車をかけています。


しかし、そうした「期待はずれ」はまだましと言えるのかもしれません。


中には、医者の無神経な言葉に直接傷つけられ、そのことで症状がさらに悪化してしまったという話も少なからず耳にするからです。


「だから医療にたよらずカウンセリングで治していきましょう」ということを私は言いたいわけではありません。


そうした話を聞くと残念でため息が出てしまうのです。


薬とカウンセリングの関係は車の両輪のように互いに補い合う関係です。勿論、薬だけでよくなる場合も、カウンセリングだけでよくなる場合もないわけではありません。しかし、薬によって心が多少とも落ち着きを取り戻し、カウンセリングに取り組む余裕ができてくる場合が多く、またカウンセリングで心をほぐし、整理していくことで薬の効果がさらに高まることが多いからです。


カウンセリングでは、ある程度の距離をおいて自分や周りの人を眺め、振り返ることが大切になります。


ところが、心が敏感になりすぎて不安や自責、疑念などでいっぱい、いっぱいになっている時には、そんな余裕はありません。目の前の辛さや苦しさに耐えるだけで精一杯になり、早くラクになりたいという焦りでカウンセリングが空回りしてしまうのです。


だから、一人の医者の対応に不信感を感じて、「医者なんてどれも同じ」と医療全体を拒否しまうのは、もしかしたら役に立つかもしれない薬の効果を自分から捨てることになって、とても勿体ないと感じるのです。


当たり前ですが、医者の対応は一人ひとり違います。同じ病院に勤めている医者でも、まったくタイプが違う場合がとてもよくあるのです。


ある患者さんなどは、通院し始めた頃はA医師との相性がよかったのですが、症状が治っていくにつれてA医師が合わなくなり、途中からはB医師の方と相性が合うようになって主治医を変えていったということもありました。


確かにちょっとしたことで主治医を変えるというのは腰を落ち着けた治療ができず、病状も不安定になりやすいのでお勧めできませんが、医療的な治療をそれであきらめてしまうくらいなら、曜日を変えて別の医者を試してみたり、それでもダメなら別の病院にあたってみる価値はあると思うのです。


また、薬の副作用についても同じようなことが言えると思います。


せっかく意を決して受診したのに、飲み始めてすぐの副作用にびっくりして通院をやめてしまったという話もとても多いからです。


ただ、そこで考えて欲しいのは、辛い副作用や薬の効き目を調整するために医者がいるということです。


辛い副作用をやみくもに我慢する必要はありません。副作用だけでなく、生活する上で困ってしまうような薬の効き目についても遠慮せずに主治医と相談してみてください。


相性のあう医者にめぐりあい、自分に合った薬を相談し、試しながら調整していくことは、回復のために大きな力になると思います。


「薬が嫌だからカウンセリングを」なんて言わないで、薬とカウンセリングの両方の効果を生かして、自分に合った最善の治療を目指していきたいものです。


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